せんだいメディアテークは何を発信しているのか?

人との出会いが始まり。
市民の中にある施設でなければ
存在意義がありません。

企画・活動支援室 活動支援係 服部暁典さん

知と文化の『ノード』を担う複合施設

定禅寺通沿いに溶けこむような透明感ある建物。『せんだいメディアテーク』は、市民図書館、ギャラリー、映像音響ライブラリー、スタジオと、さまざまな機能が集まる文化複合施設。平成13年1月の開館当初は、その先進の建築技法でも全国的に話題になった。
同施設は、平成23年の東日本大震災を経て、大きく舵のとり方が変わったという。『せんだいメディアテーク』が今、仙台市民に何を発信しようとしているのか。企画・活動支援室係長の服部暁典さんに話を聞いた。

定禅寺から何を発信するのか

「『せんだいメディアテーク』は、生涯学習施設であり、博物館や美術館のような収蔵品がありません。さらに、館内には図書館や市民ギャラリーなどがあり、市民の活動に施設を貸し出し、かつ館としても独自に発信する施設です」と話す企画・活動支援室の服部さん。「私たち企画・活動支援室の役割のひとつは、仙台市内外ですでに活動をし、成果を出している市民の文化活動から、相談を受けたときに、まず話を聞いて、学芸員の専門的な知識や経験値をもとに、どうしたら1+1が3や4になるか、一緒に考えることかもしれません」。何かをしたい人の意欲や本気に応えて、知恵や空間を提供しより良い成果を出すための手伝いをする施設なのだ。

『せんだいメディアテーク』では、3つを軸に事業を展開している。一つは、最新の「知」と文化を提供すること。二つめは、あらゆるバリアから自由であること。例えば、障がいがあっても、子育て中でもストレスがなく自由に使える施設であること。三つめは、ターミナルではなく『節点(ノード、node)』であること。最新のアートや文化活動を基にした企画や事業も、それが終着点ではなく、受け取る方に渡していく中継点だという。

定禅寺通に開かれた施設として
イベントを共にサポートする

 『せんだいメディアテーク』の1階、プラザには、受付、ショップ、カフェ、オープンスクエアがある。屋内ではあるが、多くの人が往来する公開空地だ。ゴールデンウィークから9月第一週までは、天候が良いとガラスの壁を全開にするため歩道と一体になり、気軽に入れる空間になる。

「私たちは、定禅寺通りに立地し、そこに活動の現場があるという意味合いで、定禅寺通の町内会のようなものの一員、仲間であると認識しています」と服部さんは話す。定禅寺通という仙台市のメインストリートに面する公開空地という特徴を最大限に活かすのが、イベントとの連動だ。「仙台・青葉祭り」「とっておきの音楽祭」「定禅寺ストリートジャズフェスティバルin仙台」では毎年会場を提供。定禅寺通を中心に行う市民団体のイベントに、共催・協賛・共同主催という形で積極的に関わり、ともに盛り上げている。

受け取る人が考え、発信する
一方通行ではない活動を主催

「市民の話をフラットな視点で聞いて、必要な手伝いができる立ち位置を大切にしたい」と話す服部さん。けれども、同館を運営する仙台市市民文化事業団としての最終使命は、仙台市民の文化・向上に資すること。「地域社会にどんな影響を及ぼせるか、ほかに類をみない文化施設ならではの価値判断をポイントに、慎重に事業を決定します」。

プロジェクトは年度ごとに変わるが、毎年継続しているイベントとして、仙台市を中心に全国の建築を学ぶ学生の卒業設計の日本一を公開審査で決定する『せんだいデザインリーグ』がある。平成15年以来続く大会で、今や日本最大級の卒業設計展に成長。市内の建築を学ぶ大学生有志が同施設を中心会場に通年活動している。また、毎年秋には仙台市内の学生・社会人らで構成される実行委員会による『仙台短編映画祭』が開催される。

市民参加型のトークイベントも多い。例えば、テーマを設けてさまざまな立場の人々が集い哲学的な対話を行う『てつがくカフェ』は、これまで59回開催。フランスから始まった哲学カフェの導入にも取り組んできた鷲田清一館長が参加することもある。また、同様に、一方通行ではないイベントとして『シネバトル』がある。自分のイチ押し映画について各自がプレゼンを行ない、観覧者が最もみたい映画に投票して優勝者を決定。年に一度、優勝者ばかりが集うプレゼンの勝者が選ぶイチ押し映画の上映会も開催される。受け取るだけではなく、誰でも参加できるイベントで、自分を発見したり、人と出会うきっかけにもなる。

小さい子どもに対するアプローチが十分でないという課題に対しても取り組んでいる。2017年2月に行った『こどもスクエア』は1階のオープンスクエアを会場にダンボールのトンネルをつくったシンプルな遊び場だが、多くの来場者が訪れた。また、図書をテーマにした展示、読み聞かせ、ワークショップ、おはなし会などが体験できる『とぷらす・ウィーク』も、親子で気軽に参加できる知のイベントだ。

東日本大震災の個人から
寄せられた記録を収集し世界に発信

画像提供:せんだいメディアテーク

そもそも「メディアテーク」とはメディアの棚という意味。棚には何を收めているのだろう。2階には、図書館の機能のひとつとして映像音響ライブラリーがある。仙台市の施設のひとつだった学校教材のライブラリーを移管。ほかには、8ミリフィルムといった古い映像資料やこれまでの事業の記録映像も保管している。

また東日本大震災は、同館にとっても大きな節目となった。平成7年に起きた阪神淡路大震災と違って高性能な携帯電話機器や、インターネット環境などもあって、個人の記録が膨大に増えた。そんな状況を利用し、市民自らが震災復興記録し、世界中に発信するプラットホームとして『3がつ11にちをわすれないためにセンター』を開設。市民が参加し、記録活動に取り組み、それらの写真、音声、動画等をウェブサイトで公開するなど、震災を伝承したいと考える地域の人たちの活動の現場となった。

アートの現場を創る拠点であり
アートと出会う交差点でもある

3月11日をわすれないためにセンター
http://recorder311.smt.jp/

毎年、秋には現代アートを中心とした展覧会を行なう。2016年度は、畠山直哉氏の写真展『まっぷたつの風景』を開催した。畠山氏は、鉱山や地下空間などを被写体に作品を発表し、国際的に活躍してきた写真家で、せんだいメディアテークの建築中の写真も撮影。東日本大震災以降は、故郷の陸前高田市の風景を撮影し続け、写真展では、約200点の作品とともに、作品制作のプロセスとなるコンタクトシート約4500カットを30mを超えるテーブルに並べた。普遍性の高いテーマに取り組んだ写真展として、高い評価を得た。

2016年度からスタートした『アートノード』は「優れたアーティストのユニークな視点と仕事」と、地域の「人材、資源、課題」をつなぎ、さまざまなプロジェクトを市内の各地で行なう。メディアテークの中で行なう切り口と別に、積極的に外に出て展開するプロジェクトだ。鑑賞にとどまらずアートの現場を仙台につくりだす、人を掘り起こす事業で、今後が楽しみだ。

「美術館、博物館であっても、地域の人たちとコミュニケーションをとる必要があります。特に『せんだいメディアテーク』は、収蔵品がないため、人と出会わなければ何もないのが特徴です。人との出会いが始まりであり、得たものをまた地域の誰かに還元するのが私たちの役割。そういった活動を通じ、互いに信頼関係を築いていきたい。ぜひ一度、何らかのイベントに訪れてもらえたら」と服部さん。

『せんだいメディアテーク』は人々が交わる往来であり広場だ。最初の一歩を踏み出すのは多少勇気がいるかもしれないが、その扉は、いつでも開かれている。夢がある人も、夢を手探りで探している人も、まず足を踏み入れて出会いのケミストリーを楽しんでほしい。

[DATA]

せんだいメディアテーク
〒980-0821 宮城県仙台市青葉区青葉区春日町2-1 Tel:022-713-3171

■開館

・せんだいメディアテーク 9:00~22:00
・仙台市民図書館・映像音響ライブラリー 10:00~22:00(土・日・祝は10:00~18:00)

■休館日

・せんだいメディアテーク
 保守点検日(1月から11月までの第4木曜日)、年末年始(12月29日から1月3日)
・仙台市民図書館・映像音響ライブラリー
 月曜(休日を除く)、休日の翌日、保守点検日(1月から11月までの第4木曜日、ただし休日に当たるときは開館しその翌日が休館)、年末年始(12月29日から1月4日)、特別整理期間

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