使い込むほど味が出るこだわりのモノたち

作ったヒトと選んだヒトの
大きな想いがつまった小さなお店

定禅寺通から少し入った所に佇む「山ぶどうのかご、うつわ、衣料、古布のもの」を扱う和田小店。「国内の職人や作家が想いを込め、手をかけたものを見てほしい、手間ひまを惜しまず作られたものが消えていかないように」との想いで2010年に店をオープン。オーナーの和田希さんが自ら、お店、商品のこだわりを綴ってくれた。

小さなお店を開くまで

曽祖父が菓子職人で菓子店を営んでおり、跡を継いだ母が、菓子と母が選んだうつわや工芸品を扱うお店をしていました。住居の一角にお店があり、母が働く姿を日常的に見て、手仕事のものや古道具に囲まれて育ちました。休日は父が運転する車に乗り、母と三人でうつわ作家さんの工房や仕入れに連れて行ってもらいました。そのような環境で、十代の頃は自然と母の跡を継ぐのかなぁと思ったこともありました。

大学進学を機に上京し、卒業後も東京で事務や接客の仕事を経験しましたが、少し違和感をもって働いていました。結婚を機に社会とのつながり・接点をもつ上で、楽しく思う生き方とは何だろう、と考えるようになり、小さなお店をしてみたいと思いました。

普遍性のある商品を選ぶ

私は古いもの、新しいものでも経年変化でより素敵に育っていくものが大好きです。うつわも山ぶどうの籠や衣類も、作り手の純粋で真摯なものづくりの姿勢、流行に流されない良さが現れた作品に惹かれます。大量生産がかなわない分、一つひとつが愛おしく感じます。

ツヤが増し育つ楽しみ

オーナーの和田さんが20年近く愛用している山ぶどうのかご

山ぶどうのかごは、樹皮が非常に丈夫なことから、農閑期に農家の方が山仕事や畑仕事の道具入れとして、樹皮を素材にかごを作ったことが始まりのようです。私も20年近く愛用しているかごがありますが、その魅力はやはり丈夫さ、しなやかさ、ツヤがだんだんと増す姿にあると思います。時とともに劣化するのではなく育っていき、育てることが楽しくなります。

材料採取から整え、編みまで

山ぶどうのかご
産地・福島県

山ぶどうのかごは、現在3人の作家さんに直接製作をお願いしています。作家さんはそれぞれ、自ら山に入り、材料の採取、整え、編みまで行っています。材の産地は福島県と山形県で、一年で最も樹皮を採取しやすく、良質であり、木への負担も少ない梅雨時期に数回にわけて採取されます。採取作業も、材料を運ぶのも体力と根気が必要で、頭が下がります。採取後は、適した環境下でよく乾燥させます。その後水分を含ませてしなやかにした状態で、作品に合わせて皮をひご状に切り材料として整え、自作の木型に這わせながら編んでいきます。昔ながらの透かし編みや網代編みに加え、さまざまな編み方が作家さんの手によって生まれています。

写真のかごは、良質な材料を厳選し、ひごの整え方、編みなど、とても丁寧です。本体は乱れ編みという編み方で、持ち手は六ツ編みで手の馴染みもよく可愛らしいです。日々のお出かけに頻度高く持てるように、必要なものが綺麗に収まり、形のバランスも考えて、横28㎝、高さ18㎝、マチ9㎝の寸法で製作を依頼しました。使わないときも、インテリアとしてドライフラワーや中に花器を入れて生花を飾るのも楽しいと思います。

気持ちが動く作品を選ぶ

現在、10人の作家さんのうつわを扱っています。作品を見たときの感動やひとめぼれで気持ちが動いて、手に取ったときに伝わるものも感じながら、正直な気持ちで選んでいます。飯碗は、手に持ったときの重さや深さ、急須は注ぎやすさ、湯呑みは手馴染みや口当たりの良さ、マグカップはハンドルの握りやすさなどを大事にしています。

そして、モノだけではなく、ヒトとヒトのお付き合いになるので、作家さんの人柄やものづくりの姿勢にも強く惹かれます。好きな作家さんに共通しているのは古いうつわを愛していること。日本や東南アジア、西洋の古いうつわ、李朝のうつわなどから想を得て、独自の作陶をされている方々です。

一つひとつ異なる色の味わい

灰釉面取りカップ
作り手:鈴木勝(まさる) 産地:札幌市
平成2年萩焼山林休雪窯にて修業。平成8年札幌に帰着、
平成9年より天(てん)勝(しょう)陶房(とうぼう)を開く

写真の『灰釉面取りカップ』は、極限まで薄く面取りし、技術の高さとともに作家さんの製作時の集中力が心地よく伝わるところに惹かれています。薄くありながらよく焼き締めた土味と自然釉ならではの、その都度異なる色の味わいが好きです。陶土は、作陶の地、北海道の土をベースに、自ら3種ほどブレンドしています。釉薬も薪ストーブの灰など、ご自身の生活にそったものを使っています。

お茶や珈琲のマイカップとして。温かい飲み物も冷たい飲み物も、温度が素直に感じられます。陶器ですが薄いグラスのような口当たりが新鮮ですし、電子レンジが使える点も、驚かれるところです。

生地、織り、縫製にこだわる

白いシャツをセレクトし続けている理由は、年齢や流行を問わず着られることと、白という潔いシンプルななかに、素材や形のこだわりが感じられること、着る方の個性を控えめにちゃんと出してくれる気がするからです。

2012年から毎年3月頃には、10~15種類ほどを厳選して『白シャツブラウスの会』を催します。小さな企画ですが、春の訪れを楽しみ、前向きな気持にさせてくれます。

白いシャツは、形、デザインはもちろん、自然素材で肌馴染みがよく、織りが丈夫で経年変化も楽しみながら長年着られるものを選んでいます。コットン100%とリネン(ヨーロッパ麻)100%を多く扱っていますが、同じコットン100%でも、繊維を極限まで打ち込んだ超高密度のタイプライターと呼ばれる生地のものは、薄地でもハリがありとても丈夫です。アイロンをかけても、ノーアイロンでも素敵に着ていただけます。リネン100%のものでは、私は特にベルギーリネンの質感、丈夫さ、経年変化での柔らかさが好きです。今あるベルギーリネンのシャツは、ベルギー原産のリネン糸を使用し国内で折り上げた生地を揉みほぐし、ふんわりとした風合いがあるものです。

縫製は生地にもよりますが、ロックミシンを極力使っていない、丁寧な伏せ縫いのものが特に好きです。着用回数、洗濯回数を重ねても、型くずれやホツレなどが少なく、長く着用できるからです。

日本の古布仕立ての服も

作り手・すずきかねこ 産地・福島県
写真は古布帯芯から仕立てたブラウスジャケット

日本の昔ながらのシャリ感が強い麻も好きで、夏に古布仕立ての洋服として並ぶことが多いです。古布仕立ての洋服は、すずきかねこさんの作品を扱っています。生地は絣や紬などの着物地や、粉袋、酒袋、帯芯など様々ですが、昔ながらの手織りや染めのものは本当に素晴らしいです。すずきさんの手で刺し子が施されたりと、古布の風合いを生かした可愛いらしく懐かしい雰囲気の洋服が生まれています。全身を古布の洋服で統一するのではなく、お手持ちの服と合わせやすいのも、すずきさんの作品に惹かれる大きな理由です。古布仕立ての洋服に先入観や苦手意識のあった方にも、興味を持っていただけるようになり、嬉しく感じています。

[DATA]

和田小店
仙台市青葉区春日町9-1 第3今野興業ビル1F

■営業時間

12:00~17:00

■休業日

木・日(臨時休業あり)

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